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なぜFUKUBUKUROは正月に売っていないのか – 海外催事事情を考える
お久しぶりです。TAMSAN編集部です。
「待て次回!」と煽ってはや1ヶ月……月日が流れるのは早いですね。すみません。
さて今回ですが、写真の福袋、あるいはFUKUBUKUROというものを考察しつつ、
シンガポールの催事事情について考えてみたいと思います。
福袋とは何か
海外にも福袋はあるのか。そもそも福袋とはどこから生まれた文化なのか?
まず福袋の定義を見てみましょう。
古来、日本で言う福袋は、福(幸福、幸運)が入っている袋のことで、代表的なものは、福の神である大黒天が打出小槌(うちでのこづち)・米俵とともに携えている大きな布袋である……(中略)……今様の狭義で言う福袋は、近現代の日本における商習慣の一つ。年始(正月)用の割安な商品として企画販売される、袋詰め商品であり、複数の異なる品が同封されているものである。(Wikipediaより引用)
ということで本来、福袋というのは七福神の一人、大黒天が抱えている袋を指していました。
この大黒天というのは本来インド出身で、しかも破壊を司る神様でした。
しかし、昔の人は大国主(因幡の白兎を助けたことで知られる神)と同一視するようになり
いかつい表情の大黒天はいつしか温和な表情となり、親しみが持てる風貌へと変化します。
その大黒天のトレードマーク、大きな袋に目をつけ、これを商品化したら
縁起が良さそうだから売れるんじゃね?と考えた人がいたのでしょう。
こうして、今我々に馴染みのある「福袋」は生まれたのです。
こうした経緯で商品化された福袋の歴史は意外に浅く、
明治の後期に百貨店で売り出されたのが始まりとされています。
で、その福袋がなぜシンガポールで注目されているのでしょうか。
福袋からFUKUBUKUROへ
福袋の発祥の地は日本でした。
とはいえ、あくまで海外ではその存在を知られていない、日本だけのローカル商品でした。
これが海外でも普通に見られるようになったのは2000年代のことです。
一説によると、ハワイにあるアラモナアセンターで販売されたものがその先駆けと言われています。
ハワイで正月を過ごす日本人は一定数いるので、
そうした人をターゲットに福袋を売り始めたというのがあるかもしれません。
しかし、福袋が海外で知られる要因となったのはAppleの「Lucky Bag」の存在が大きいのです。
日本文化を重んじたApple
Apple Storeが初めて日本に出店したのは2003年秋のことです。
翌年の2004年1月、Appleは日本限定のイベントとして、
Apple版福袋とでも言うべきLucky Bagの販売を開始します。
Appleらしい、日本のファンに向けた粋なサービスといえるでしょう。
これは大きな支持を得てファンに受け入れられました。
ファンの声に応える形で、半年後の心斎橋店オープンの際にもLucky Bagは登場し、
以後はAppleの正月定番商品として定着することになります。
Lucky Bagは(わずかな例外を除いて)今日でも日本のみの商品ですが、
海外でもその存在はよく知られています。
日本以外のApple Storeでも販売せよという声は毎年上がっています。
(参考:Mac Rumor 2014年のLucky Bagフォーラム)
何故こんなお得なものが日本だけで売られているのかと疑問に思ったユーザーは、
Lucky Bagを調べた結果「福袋」という日本独自の文化を知ることになりました。
こうして福袋はFUKUBUKUROとして、国外で着実にその知名度を上げていくことになったのです。
FUKUBUKUROは正月に売ってはいけない
福袋はFUKUBUKURO、あるいはApple式名称のLucky Bagとして国外で販売されるようになりました。
他にも商品のおまけとしてサービスされるなど、新たな商慣習としてその存在感を増しつつあります。
しかし、日本で福袋が売られるのは普通は正月。
今は2月なのに、シンガポールでアピールされているのは何故でしょう。
「あっ、もしかしてアレじゃね?」と感づいたあなたは鋭い。
そうアレです。
そう、旧正月!
中華圏の文化を受け継いでいる国が祝うのは、正月ではなく旧正月。
華人が人口の多数を占めるシンガポールもその例外ではなく、正月は空気のような存在。
正月休みなんて元旦の1日だけで、全く歯牙にもかけません。
むしろ、1月というのは旧正月に向けた溜めの期間であり、
日本とは全く異なる受け止め方をされています。
そういう訳で、FUKUBUKUROも正月ではなく旧正月に登場することになるのです。
間違っても正月初売り訴求などはやめておきましょう。
シンガポールでは。
ちなみに、中国・台湾・シンガポールだけではなく、
華人の多いマレーシア、中国文化の影響の強いベトナムやモンゴルなんかも旧正月メインです。
まとめ
ここまで、日本の福袋が世界のFUKUBUKUROとなり、
海外でその扱われ方が微妙に変わったことを記しました。
今回私がお伝えしたいことは、催事は現地を見ないとダメということです。
例え福袋が他国で人気を集めているということを事前に知ることができても、
日本での常識通り正月に販売してしまうと辛いことになってしまうのです。
他にも落とし穴はいっぱいあります。旧正月は国によって期間が違うことがあるなど……
百聞は一見にしかず。ネットでいくら調べても、現地で得られる情報には叶いません。
自分の目で見て確かめ、現地の文化を加味した上でマーケティングは行うべきです。
「グーグルに頼る人は、世界を理解できない」という記事もありますが、そういうことです。
現地に行く時間がない?その際はアジア太平洋を舞台に頑張る弊社にぜひご相談ください♪
それでは。